久しぶりの外出と『新潮』とラジオと

ずるずるずる…風邪の終わりのサインみたいな粘度の高い鼻水が出る。体温は36.4℃。

今日は美容室に予約を入れてある日だ。午前中少し悩んだけれど、もしかしたら美容室もしばらく行けなくなってしまうかもしれないし、その場合の相談もしたい、そしてずっと外に出ていないことで体が変な感じ。本当、出発するまで逡巡したけども、意を決して外に出る。

緊急事態宣言が出て初めて乗った電車はいつもより明らかに空いていた。駅はまあそれなり。意識してソーシャルディスタンスを取る。デパートは閉まってる。小さな街の本屋は意外にも、いやむしろそこしか行くところがないからか結構混んでいるのですぐに立ち去る。

ほぼ完全予約制の美容室はいつも通りだった。住宅街の中にポツンとある、いわゆる隠れ家的な、というやつ。

美容師さんも東京都の要請があるのかないのか…まだわからない段階で困惑していた。どうなるんだろうねーと言い合って、いつも通りにやってもらい、帰りにいい香りのヘアオイルを購入。本当はポイントカードがいっぱいで1000円割引だったのだけど、そこは頑なに断った。だって、これからどうなるのかわからない事態だ。自分にできるのはそれくらいで、ほんの些細なことなのだけど、どうしてもどうしても、ここはお世話になっているお店なので。

美容室は平和だった。みんな大笑いしている。女の園。奥様たちの憩いの場。

そういえばカラーリングしている間に『新潮5月号』を読んだ。岸政彦さんの「リリアン」を読もうと思っていたのに、たまたま開いたのが「令和元年のテロリズム 第四回 元農水省事務次官裁判から考える」(磯部涼)で、詳細な記録に胸が苦しくなる。元農水省事務次官の熊澤氏が、アスペルガーの40代の息子が小学校の運動会の音に腹を立て「うるせえな、ぶっ殺すぞ」と言ったことを発端に、息子を刺殺してしまった。その数日前には登戸での無差別殺傷事件が起こっていたことで賞賛する声すら上がった悲しい事件である。息子からの執拗な暴力暴言、今まで育ててきた苦労、そして長女である妹が「変な兄がいる」ということで結婚が破談になり自殺してしまった不幸な過去などが明かされている。

そして「お父さんはいいよね、東大を出て何でも自由になって。僕の44年の人生は何だったんだ」という亡くなった被害男性の言葉。

家族だけでこんなに苦しまなきゃならなかったのか。繋がっていたはずの精神科医療や、精神障害発達障害福祉は手を尽くせたのか。とにかく悲しい。外からはうまくいってそうに見える家族だっていろんな痛みや苦しみを抱えているんだろう。人生の惨さをまた思うのだった。

帰りの電車もやっぱりそんなに混んでいなかった。いつもは焼き鳥居酒屋をやっているお店が外でお弁当を売っていたので応援もかねて買う。毎日3食作るの飽きたというのもある。

ラジオを聞く。夢眠ねむさんの話を聞いている途中でニュースが入る。今日の東京都の感染者は過去最多の180人以上。他国の経過を見てる限り、これでは済まないだろう。

 

写真:美容室に行く住宅街に咲く花
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