コンビニバイト

 1996年、初めてチェーンのコンビニで働いた。まだ学生時代だった。特にお金が欲しかったわけでもない。相変わらずバイトは「みんながやっているから」とか「暇つぶし」的なもので一生懸命さはなかったが、職場は学生アルバイトが多く和気あいあいとしたムード、オーナーも店長もいい人だったし気楽だった。私はハーフパンツでバイトに行き注意され、ジーンズの裾をダラダラと引きずって歩き、店長にハサミで切られたりしていた。お弁当を温めすぎて破裂させることもあった。お客さんにいちゃもんをつけられることもあった。でもこの制服を着ていることで何となく匿名になったような気がする。みんなと一緒、そしてどの店舗でも同じ服装。それが自分を守ってくれる感じは初めて味わったことだった。自分だけど自分じゃない。私はセブンだ!

 おでんや中華まんが始まる秋の頃、寒くなっていく季節がほんわり温まるような気がした。思い出すと少し寂しく感じる。それは自由奔放で無邪気だった自分や好きだった札幌の風景が混ざってなんだかノスタルジックな気持ちになるからかもしれない。

 学生アルバイトは入れ替わり立ち替わりが常。私もそのうち辞めた。今も実家のアルバムには、バックヤードでみんなと撮った写真が残っている。バイトで仲の良かった子や店長とも撮ってあった。これが学生時代最後のアルバイトだった。