駅の本屋

 春から学校に通い始めた私はしばらくアルバイトをしなかった。多分。もう忘れているようなこともあるかもしれない。けど、ある時、また初心に帰って本屋で働いてみようと思った。そこは駅直結の書店だった。

 今なら想像がつく!駅の本屋ということは、そうスピード命!会計もカバーをかけるのもそこそこ急かされるのである。売り場を回る時間はほとんどなくレジ中心の仕事だった。忙しい。カウンターの中ではバチバチ女たちの戦い。いちいち言い方もきつい。そう、感じが悪いのだった…。

 誰でもそうだろうが、私は人間関係がうまくいかないとすぐに嫌になるたちなのだ。そこそこ暇な時間もないと耐えられない。全然ダメじゃないか。私はどんどん憂鬱になっていく。日々が楽しくなくなる。本に囲まれる喜びも感じられなかった。いまだにこれになるのだが、週数回数時間の勤務だったとしても、それ以外の時間に仕事のことばかり考えてしまい(正確には仕事での人間関係のこと)日々がどんよりしてしまう。

 結局、そこからブックカバー掛けがプロ級に素早くなるわけでもなく、3ヶ月くらいで脱落してしまった。辞めることを店長に言って、それが女子社員に伝わると「え?もしかして私のせい?」と言っていた人がいたのだけど…自覚あるのかよ、と思った。

 私の「嫌なバイトはすぐ辞める」癖はあっという間に定着してしまった。そして今後もまだまだ続くのだった。今ならわかる。過去の幸せだった記憶を求めて働いても、そこは新しい場所。過去に戻れる訳ではないのだ。