何が不満なの?

11月3日(火)祝日、晴れ

とんでもない日々を過ごしていた。アルコールによって理性が剥がれ落ち、露わになった激しい感情によって破壊的行為。もう何か全部、終わって、残りを生きる気力もなく、ストレスは上限を超え、過去があまりにも美しくて泣いた。今まで楽しかったありがとうと心から思い、全ては過去にしか存在しないと思った。未来は確かにまだ無いわけで、それはそうだけれど、信じる力もなかった。友達を振り切ってタクシーで帰って、iPhoneの電源を落としてベッドの下に投げ捨てた。友達からは何度も連絡が入っていて、後に謝った。

私の愚かな行為は帰って来たやっちゃんに発見され、すぐに剥がされ、「何がそんなに不満なの?」と言われる。

「全部だよ!生きてることだよ!人間が嫌だよ。生きてたくないの!」叫ぶうちに涙が流れ落ちる。しかしその実、身体が苦しむその前に小さい声で発せられたのは「たすけて」だった。それには驚いたけれど、それが本当の気持ちだったのではないか。

誰かここから救い出してくれと、他力本願だったのではないか。

「もう仕事はだめだよ。行かないよ」と言われうなだれる。仕事だけが全てのこの行為に至る原因ではないけれど、誘発したことは確かだったのだろう。

人生の積み重ねで、もう、予測をつけてしまっていた。何度もこんな時期がやってくることをわかった気になってしまっていた。

その瞬間、窓を開けて体を乗り出したのを引き戻される。

大きな声で泣き叫ぶ自分と、対峙するやっちゃん。この構図は過去にもあった。

でも何年も前のことだった。そしてそのつらい時期はしばらく続いたのだった。

その日は薬を飲んで眠り、夜中に起きてまた薬を飲んだ。そして、おもむろに外に出て、ふらふらと歩き、近くの公園のベンチに座り、さわさわと揺れる大きな木を見た。でもただ寒く、虚しく、悲しく、苦しく、解決策も浮かばずわ結局、部屋に戻って眠った。午前4時半、やっちゃんが様子を見に来る。

今日から仕事は行かないとわたしの上司に連絡すると言う。わたしは電話番号を書いて渡す。

「旅行いこう?どこ行きたい?カニ食べに北陸にでも行く?」と言われ、カニ好きなわたしは「うん、そうする」と答える。

もう、このまま仕事は終わりなのだとその時は思っていた。が、しかし、午前8時を過ぎ、上司に電話をしても繋がらなかった。

シフトで働いているから、代わりの人が見つからなければそれで終わり。

人の生活を支える仕事ゆえに、行かないわけにはいかないと、だんだん構える感じになっていく。

また少し眠る。午後、行くことを決意。最初は反対していたやっちゃんだが、事情はよく知っているので「無理はせず、嫌だったら急いで帰っておいで」と、送り出してくれた。

死が目の前にあったはずなのに、人のためにご飯を作る、お風呂に入れる。人間の営みそのものに関わるのだった。

みんな笑顔だった。言語を持たない人は何故かわたしの頭を「よしよし」と撫でた。そんなみんなを裏切るところだった。

その後も相変わらず苦戦の日々が続き、今日3日目、やっとピタッとはまる支援が最後の最後にあって、うまくいった。夜勤スタッフと表情だけで喜びを分かち合って、帰った。3日間挑戦してすんでのところで敗北してきたことが、ギリギリうまくいった瞬間だった。

努力が実ったような、負けていた試合の最後に逆転サヨナラをしたような、異様な高揚感だった。達成感。すべてに感謝したい気持ちになった。

もちろんこれが続かないことはわかっている。でも、今日は、今日だけは良しだ。

こんな気持ちで帰って来られたのはいつぶりか。

色々あったけれど、あり過ぎたけれど、今わたしは生きていて、その高揚感を感じている。それだけでいいのではないか。

戻って来れた。

あの状態から、当たり前のように働き続けている。明日もシフトに入っている。ここまで盛り返せたこと、実はすごいことなのでは?

むしろ、酒は本音を暴くから、我慢が利かなくなるから、危険なのでは?特に今は。

何でもなかったようにして、日々にまた溶け込んでいく。

本当はもっと書きたいことがあるけれど、おやすみ。