なんでもない夜のスーパー

 今年(2019年)、梅雨に入る前くらいだったか、夜の9時くらいに一人で散歩に出かけた。いつもとは違うコースを歩いてみる。昼間は少し気温は上がるけれど、日が落ちると夜風が涼しく感じられた。すっかり暗くなった住宅街を通る。窓から漏れる明かり。テレビの音やお風呂の匂い、そこに家族の生活を感じる。大きな通りにぶつかって、何となくスーパーに寄ってみることにした。

 店内は昼間や夕方来るのとは違って客もまばらで静かだった。入り口のすぐそばの棚に西瓜が並んでいる。昼間のラジオでも今が旬で美味しいと言っていた小玉スイカだった。こじんまりとしているがピカピカした西瓜の存在はこれから来る夏を際立たせる。ぐるっと店内をまわる。混んでいないせいで早歩きしても人にぶつかることはない。スイスイいろんな売り場を見て歩くことができた。仕事帰りに夕飯を買いに来たようなスーツ姿の男性を見かける。ここにも生活がある。レジももちろん空いていて、並んで待つこともなく済んだ。ピークが終わり、店員さんも心なしかホッとしているように見える。

 私は、この夜の静かでのんびりとした夜のスーパーの光景を、この先何度も思い出すような気がした。平和で、なんでもない日の夜のことを。麦茶を買って帰り、お風呂から上がってゴクゴクと飲んだ。なんだかすっと心にしみるような気がした。