東京にたどり着く

 北海道新幹線が開通して以来、実家の函館に帰るにも新幹線を利用することが多くなったけれど、数年前まで飛行機で帰るのが主だった。夕方に函館空港を飛び立ち、羽田空港に到着する時にはすっかり暗くなる。その飛行機が着陸する時に見える東京の景色が好きだった。「ただいま」というには少しおこがましく感じる。私のものには決してならない都会の灯り。車のライトが連なって線を描いている。到着して飛行機を降りた時の空気の感触。函館に降り立つ時は夏でも冬でもいつも「寒っ!」と思うのと逆で、東京は暖かく感じる。そして活気に安堵する。

 空港からはバスに乗ることが多い。荷物を抱えて座れるか分からない電車に乗るのが面倒というのが理由。バスに乗って走り出し、少しずつ街の中に入っていくあの景色がいつも私をワクワクさせる。レストランやカフェの窓の奥にいる人たち、オフィスの窓、マンションの窓、そこから見える人々の生活を想像するのが楽しい。数秒ごとに変わる景色に視点も思いもコロコロと色を変えて変わり、東京タワーを見るとなぜか毎回見入ってしまう。スカイツリーができてなお、東京タワーのあのフォルムと放つ光の美しさに惹かれる。60年以上も東京の人々の暮らしを見守ってきた貫禄というのだろうか。シンボルである事は今でも変らないだろう。

 都心を抜けて少し暗くなり、バスが最寄駅に着くと今度は心底ホッとする。自分のいるべき場所に戻ってきたのだと感じる。見知らぬ土地で暮らし始めて馴染みも何もなかったはずなのにいつの間にか函館で暮らした時間よりも長くなっていた。