CDショップの日々

 (久しぶりに仕事シリーズ投稿)(ラジオからストーンローゼスの曲が流れてきて古い時代を思い出したから)

 1997年、就職するでもなくふらふらしていた私はまた本屋の求人広告を見て応募した。そこは本、CD販売、レンタルの3コーナーがありどこに配属されるかわからなかったが、私は本屋を希望していた。

 採用の電話が来る。それはCD販売だった。そんなに詳しくないのになぁと思いつつ、バイト生活はスタート。時給は650円くらい。シフトは夕方から閉店の0時までだ。朝から働くということを避けていたのだろうか。今思うと週5で毎日夕方から働く意味がわからない。けれどなんだかそれは学生生活の延長で、社会にはまだ出ていないぞと踏ん張っているような日々だったのかもしれない。

 当時、洋楽を聞いていた私はいつも社員さんからオススメの音楽を教えてもらっていた。その中で出会ったのがレディオヘッドでありオアシスでありブラーやニルヴァーナだった。店内でも繰り返しCDをかけた。中には私が書いたポップを読んで「聞いてみたくなった」と言ってCDを買ってくれるお客さんまでいた。また、ずっと探しているという曲が入ったCDを見つけ取り寄せ、感謝されることもあった。まだインターネットがそれほど普及していなかった時代ならではである。そんなことが励みになったし、やりがいとはこういうことなのかとちょっと感動を覚えた。

 どんどん音楽にのめり込み、気づくと給料の半分をCDに費やす月もあった。アルバイト同士は仲が良く仕事終わりにみんなで集まって朝まで遊ぶことも多々あった。一人暮らしの大学院生の友達の家に行ったり、カラオケやドライブをしたりして、帰って昼まで寝て、また夕方からバイト。客観的に見るとどこに向かっているのかわからない毎日だけれども、ただ日々は充実していて楽しかった。不安がなかったわけではない。でも、なんとなく、時間は過ぎてしまった。人間関係が密接になるほどに、社員に期待されるほどに、そこが自分の居場所になっていく感覚で、実にそれは初めての、ちゃんと働いている体験だった。もう学校はなく、店だけが私の通う場所だったのだからメインになるのは当然だった。

 花火大会の日は、浴衣を着たお客さんが楽しそうに来るし、クリスマスも、大晦日だってお客さんはやって来て、私もいつもそこで働いていた。そういう日に休みたいとは思わなかった。むしろみんなが休んでいる時に働くことが楽しいような気持ちになった。しかし翌年、私は「ちゃんと就職しよう」と決意する。それは突然降って湧いた考えだった。身を固めよう、みたいな、なんでそんなことを考えたのかわからない。でもきっとそうすることが正しいような気がしたのだろう。それは、うまくいくように思えたが…。